Column

2018.06.25

ポストCookie時代の広告コミュニケーション




トレーディングデスク局
Trading Division リーダー
舩戸 裕太

Cookie情報をメインにユーザーの属性やモチベーションをセグメンテーションすることができ、詳細なターゲティングを実現できるオンライン広告は、広告主がユーザーとのコミュニケーションを取るにあたって不可欠であり、メインとなるアプローチ方法となっています。
しかし近年では、広告詐欺やブランド毀損、個人情報保護への取り組みなど、オンライン広告を取り巻く環境にいくつもの大きな変化が起き始めています。


出典元: https://www.turchette.com/digital-remarketing-awesome-cookies/

オンライン上でのユーザーコミュニケーションに関して、広告主とエージェンシーは考えや取り組みを修正する必要が出てきたのではないでしょうか。

■はじめに
2011年頃からのDSP(RTB)の登場により、「枠から人へ」という広告の「掲載面」ではなく「誰に」広告を配信するかが重要視されるようになりました。「誰に」をWEB上で定義・特定するための手法としてメインストリームにあるのが、Cookieを活用したターゲティングとなります。Cookieとは、簡単に言うと「自分がどのページを見たのか、どのような行動をしたのかをブラウザに保持するための情報」のこと指します。サイトに時間が経ってから再訪問したにも関わらずログイン済みになっていたり、ショッピングサイトのカートに以前入れた商品が残っていたりするのはCookieの働きです。
このCookieをユーザーのブラウザに付与することで、以後ページを見た人物が同一人物であるかを判断することができ、且つYahoo!やGoogleなどのメディアサイトを訪れたユーザーが自動車のサイトを好んでいるなど、趣味趣向を特定することが可能となります。これらの情報を元にして、リターゲティングやユーザーの興味関心を軸にしたターゲティングが実現されています。「枠から人へ」という概念をベースにプログラマティック広告は進化、成長を続けてきました。

しかしながら、そのCookieを元にしたターゲティングが終わりを迎えるかもしれません。

■Cookieターゲティング終焉の兆し
ポストCookieターゲティングの時代を迎えるにあたり、要素となるのは以下3点と考えられます。

(1)ITP:Intelligent Tracking Preventionの略
Appleの独自ブラウザSafariに新しく備わった機械学習を用いてCookieを判別、トラッキングデータを分離(削除)する機能。本機能により、ユーザーが望まないトラッキングを防ごうとする仕組みです。
出典元: https://goo.gl/nkWaZ1

Cookie を利用しているターゲティング広告であれば、最終インタラクションから最大24時間までしか追従できないことになり、インタラクションなしの Cookie を利用しているリターゲティング広告であれば、どのような方法で Cookie をセットしたとしても Safari側で即座に隔離されてしまうため、そもそもターゲティング広告の対象として追加されません。

(2)eプライバシー規則
eプライバシー規則が適用される場合には、Cookie含めてデータの処理には利用者の同意を取得する必要があり、eプライバシー規則に違反をした場合には多額の罰金を課される可能性があります。

(3)GDPR:General Data Protection Regulationの略
eプライバシー規則とは別の法律。eプライバシー規則はCookieの収集と保存に関するものであるものに対してGDPRは更に幅広い内容を取り扱っており、個人情報・プライバシーに関するデータ処理と管理に関する新たな枠組みとなります。個人情報やデータを利用する企業はユーザーから同意を明確に求められるようになります。

出典元: https://blogs.mcafee.jp/general-data-protection-regulation

ユーザー個人情報等のプライバシーやユーザービリティーの側面から、国の規制やプラットフォーマー側のトラッキングを防止する機能によって、オンラインコミュニケーションにおけるターゲティングを阻まれる可能性は今後更に高まっていくでしょう。

■ポストCookie時代の広告コミュニケーションについて考える
ポストCookie時代の広告コミュニケーションを改めて考えるには、広告プラットフォーマーと一次情報を提供するコンテンツパブリッシャーを分けて考えてみるといいかもしれません。

広告プラットフォーマーとしての代表格であるGoogle、Facebook。これらの巨大プラットフォーマーは、質の高いユーザーIDデータ、大量のログイン情報を保有し、消費者と良好な関係を築こうとしてきた企業でもあります。また、Googleは、Googleアナリティクスの利用で、ITPの影響を低くする方法を提供し(※)、Facebookは、日頃のログインからITPの影響をあまり受けないのではないか、との推測もあります。
また、これらの企業はプラットフォームの提供者であると同時に、大量のデータを蓄積するテック企業です。ログインしている消費者の行動は、どのページからどのページに遷移し、どれだけ滞在していたのか、ユーザーIDに紐づいた形で理解することができるでしょう。

※参照元: https://goo.gl/4FrBMj
AdwordsとGoogleアナリティクスの連携により、Adwords広告クリックの情報をアナリティクスのCookieへ保存することで、ITP機能が有効となっているSafari環境下でも広告クリックの情報を失わず、コンバージョン計測を行うことが可能。

一方で、コンテンツパブリッシャーの提供するコンテンツは多岐に渡り、様々なカテゴリ・ジャンルがあります。質の高いコンテンツ(記事)を提供し、製品(モノ)だけでなく考え方(コト)を理解してもらうことで、消費者と良好な関係を築こうとしてきた企業になります。こうした企業のコンテンツの提供の目的は、自社のファンとなってもらうことにあります。すぐにファンに至らなくとも、将来的にファンになり得る潜在顧客を増やすことは、重要な取り組みになります。

これまでアドテクの進化は、「枠から人へ」と言われた通り、消費者をデータとしてどう捉えるか?と言ったターゲティング手法におけるテクノロジー文脈が中心だったと感じています。対して、ネイティブアドやコンテンツディスカバリーの登場は、「人から面」への回帰・「面からコンテンツ」への昇華でもあったのではないでしょうか。
コンテンツパブリッシャーは、読者にどのような記事が読まれているか、消費者のニーズを言葉だけではなく、より一層コンテクストを読み解き理解していくことでしょう。現に、閲覧しているコンテンツの下部あるいは周囲には、次に閲覧してほしいコンテンツをレコメンドしています。なぜなら、前述したGoogle・facebookなどのプラットフォーマーのアルゴリズムの変更・アップデートに自社のビジネスが依存することをできる限り避けたいはずだからです。

今回のios11のアップデートや、2018年に予定されているChromeのアップデートは、「枠も人も、コンテンツも」といった考え方に伴って、コンテンツと広告のマッチングに関して再考する機会、さらには、広告主・メディア・ユーザーの三方良しの実現に繋がる良い機会だと思います。

更には、Cookieに代わる要素となるものはオンライン上にひたすら増えていくことも想定されます。GoogleHomeや音声検索などの声データ・カメラからインプットできる感情・Amazon上でのIDと購買データなど、挙げればキリがないです。

これまではCookieというメインストリームを元に人が考えプランニングすることでレコメンドを行っていましたが、オンライン上でのユーザーとのマッチングは今後自動化も進んでいくと考えられます。
AIがディープラーニングをもとに複数要素を掛け合わせてマッチングを行っていく世界も、そんなに遠くはないのではないでしょうか。

長い期間での視点を持ち、ユーザーとのコミュニケーションの本質に立った時、オンライン広告を取り巻く環境の変化を脅威と捉えるか機会と捉えるかで、マーケティングにおける可能性の広さが変わってくるのではないでしょうか。

広告主のマーケターやエージェンシーはこの変化を機会として捉え、広告プラットフォーマーとコンテンツパブリッシャーの動向やその背景を考察することと併せて、技術を後追いするコミュニケーションプランではなく、適宜マーケティングの根本に視点を戻す必要があると考えられます。




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