Column

2017.02.10

マーケティング観点での広告展開と人材価値の向上


トレーディングデスク局
Marketing Design Division マネージャー
関内 悟史

オンラインプロモーションにおいて、広告領域では引き続きアドフォーマットや配信システムを改善・改良していく取組が続いています。ブランディングに傾注しない限り、プロモーションの評価指標はCPAに据えて取り組んでいる広告主はまだまだ多いと感じています。

■CPAが意味することとリスク
Cost Per Acquisition、言葉の通り1件のAcquisitionにかかる費用を意味します。多くの場合、KPIとして定められたCV地点/項目に付随して獲得単価として見ることが多いです。弊社でも、広告主様や代理店様から「CPA●●円以内で獲得してください!」というご要望を頂き、運用を開始するケースが多くあります。インターネットやアプリが普及している昨今、オンラインで完結するサービスを提供している企業は増え続けています。
様々なプロモーション手法や計測/分析環境が整ってきている現状を鑑みると、事業モデルによってはCPA目標だけでの成果追求は広告主/代理店ともに動きやすい一方で、マーケティング観点で見た場合はリスクに成り得ると感じています。マーケティング活動において、CPAを最優先することを考えている方がいらっしゃれば是非ともご一読ください。

■本題に入る前に ~マーケティングとは何か~
オンラインプロモーション領域において、マーケティングという言葉が使われることは非常に増えてきています。「マーケティング」が何を指すか不明瞭なまま、なんとなく「オンラインプロモーション」≒「デジタルマーケティング」という認識をしてしまっている人が非常に多いように感じます。
特に専業代理店の状況でありがちなのが、「入社後、若くて知識や見解があまり十分でないOJTを通じてなんとなくマーケティングを知った気になる」という状況だと思います。企業や組織、個人で理解や概念が変わってしまう要因はここにあるのではないかと、個人的には考えています。(※弊社もここは注意しなければならない点です。)

さて、マーケティングの定義は様々あります。

「マーケティングとは、製品と価値を生み出して他者と交換することによって、個人や団体が必要なものや欲しいものを手に入れるために利用する社会上・経営上のプロセス」
出典:Kotler, P. et al., 2006. Marketing, 7th ed. Pearson Education Australia

「マーケティングの究極の目標は、セリング(売り込み)を不要にすることだ」
出典:「マネジメント〈エッセンシャル版〉」P.F.ドラッカー著,ダイヤモンド社

つまりどう捉えればいいのか、中々わかりにくいと思います。
個人的にすっきりとしたマーケティングの定義をご紹介します。

「消費者の求めている商品・サービスを調査し,供給する商品や販売活動の方法などを決定することで,生産者から消費者への流通を円滑にする活動。」
出典:三省堂大辞林

これを簡潔にすると、「消費者の求めている商品・サービス(を調査し,供給する商品や販売活動の方法などを決定することで,生産者から消費者へ)の流通を円滑にする活動。」と言えます。当記事においては、「消費者の求めている商品・サービスの流通を円滑にする活動。」をマーケティングとします。
この活動の一つにプロモーションがあり、それをオフラインで行うかオンラインで行うか、手法はどうするかと突き詰めて考え、細分化された施策の一つが運用型の広告です。この概念がないまま、デジタルプロモーションとデジタルマーケティングを混同してしまうと、「デジタルマーケティングの評価≒CPA」という図式に陥ってしまいます。

■なぜCPAの評価がリスクに繋がるのか
 前提としてですが、インターネット広告を活用したプロモーションに携わる人材価値を向上する目的で言及します。
 先程取りまとめた通り、マーケティングの一連の活動は非常に多岐にわたります。CPAでの評価は、大量の活動の中の特定の領域のみで通用する評価の仕方にしかなりません。各種広告を直接出稿・運用している広告主は別ですが、代理店側でCPAを追い求めすぎてしまうと、必ずジレンマに陥ります。何故なら、広告主はプロモーションや広告の効率化により、成果を最大化したいと考えている一方で、代理店側では広告の取引額を増やしたいと考えており、双方の意図・狙いが全く異なる対立する関係になってしまいます。また、CPAが算出される背景には様々な要素があります。売上、商品戦略、製造・配送等原価構成、アフターフォローサービスの利用率…等々、必要となる様々な項目・要素があり、それぞれにコストがかかっています。広告主と代理店の関係でCPA以外のコミュニケーションが少ない場合はプロジェクトが上手く回らないでしょうし、「消費者の求めている商品・サービスの流通を円滑にする活動。」という観点で見ると、消費者目線でのアクションはほぼ実現できません。

CPAに直結する事柄に集中しすぎてしまうと、広告主側でプロモーション担当をしている方でも自らの役割を限定することに繋がってしまい、「マーケティング活動」に関与する幅を狭めてしまっています。CPAに関与する項目以外の判断が必要な時は都度確認が必要になり、最悪の場合他の人の協力を仰がざるを得なくなり任せるしかなくなります。代理店もCPAを追いすぎると中々売上拡大が図れず、新しいメニューや手法が来る度に提案に動くしかありません。何となくロジックを組んで提案を行っても、ほとんどのケースで、提案時には成功も失敗も読めない状況がほとんどです。失敗が続くと、広告主からの信用も失ってしまいます。

ビジネスインパクトのある成果を出すためには領域に縛られ過ぎない発想や行動が必要ですし、それができる人材の価値こそが今後更に上がっていきます。弊社コラムで何度も言及している通り、特にインターネットを介してのプロモーションは変化も激しく、機械学習や最適化の仕組みも実装が進んでいます。施策間の重複の可能性が高いからこそ、各種計測ツールの利活用も進んでいます。そうした環境を最大限活かしてマーケティングに携わっていくことこそが、今後の企業活動の根幹を支えていきます。ビジネスインパクトのある成果を出すことができる人材として市場価値を上げることができるよう、広告主・代理店の間で視点と視座を整理し、会社間のコミュニケーションを工夫してみてください。

つきつめて考えた結果としてCPAが本質的な評価指標になる企業様もあると思いますが、何となくCPAで始めて続けてしまっていると、(1)競合他社に追いつけなくなってしまうこと(2)マーケティングに向き合い、経験を積んできた人と比べて人材価値が上がりにくくなってしまうことの2点はリスクに成り得ます。

■どのような広告評価指標にすべきか
上述のCPAに傾注するリスクを踏まえると、以下のような視点が必要になります。


 
 大きく分けて、(1)(2)という2点が必要になります。

(1)は、左側に行けばいくほど手法もフォーマットも異なる上に結果もわかりにくいため、評価が難しくなります。デジタルでの展開で完結するようであれば、アドフラウドを加味しつつ3PASでのメディア出現数を評価に加味してもいいと思います。オフラインでの展開もあり、統計を用いるのであれば標準化係数でフェーズ毎の施策を一律に評価してもいいかもしれません。実際に標準化係数で施策評価を見たこともありましたが、意外な気付きも得られて面白いです。「何をやってもいいけどCPAの範囲内でお願いしますね」と広告主から言われることもあると思いますが、CPAの経過だけを注視するのではなく、各広告施策がマーケティング活動全体の中でどのような役割を持たせたいかを考えて実行・評価を行えるようにしておく必要があります。

(2)の場合、特に運用型広告に携わっている人は持っておくべき観点です。デジタルでの広告展開では、配信や獲得の単価、反応率、収益性、絶対数等、KPIになりやすい項目は多岐に渡ります。特定のCV事項に対してCPA目標だけで運用していった際、「CV数は増えたけど、事業全体の収益性が下がった」とマーケッターから言われた場合、どのようにコミュニケーションをとるべきでしょうか?「数を取ってほしいという要望があったから運用して改善したのに、こっちのせいにされても…」と思わないでほしいです。どのような理由があってKPIが設定されたのか、収益性が下がったと考えられる要因は何があったか、何を追って運用していけばどうなりそうか…と、深く広告主のことを知り、考えていけるチャンスです。ROAS、ROI、LTV等、分かっていても使いにくい指標かもしれませんが、是非CPAからシフトしてみてはいかがでしょうか。

必ずといっていいほど、大きな評価指標は中/小項目によって構成されています。各指標全てで個別最適化を優先しようとしても、マーケティング全体としての取り組みは統一感を持つことが難しくなります。組織も役割も違うのである程度の機密性もありますし、チーム運営上は広告主側がディレクションを行うことが多いと思いますが、代理店側・広告主側ともに、目的に対する指標を分解・整理して自分たちで考え、施策価値を上げていく取組を行うことが必要です。そのためには、相互の業界内外も含め様々な情報が必要になるため、情報価値を理解してマーケティング全体に向き合うことが必要です。
ただ、1点絶対に最優先することがあります。マーケティングは「消費者の求めている商品・サービスの流通を円滑にする活動。」と何度も記載しました。あくまでも消費者もしくはエンドユーザーのことを最優先で考え、取り組んでください。

■将来的な人材価値
 これまではマーケティング全体への向き合い方や指標について記載してきましたが、少し長い視点での人材価値を考えてみます。
 現在、運用型広告を用いてデジタルプロモーションに携わっている方だと、

(1)数字を把握する→状況判断→施策反映
(2)アップデートされるメディア/プラットフォームの情報整理
(3)各種配信・計測ツールの役割理解、利用

上記3点は普段から馴染みのある習慣ではないでしょうか。
業界の特徴として、様々な領域でのアップデートは非常に盛んです。キャッチアップするだけで大変と感じるかもしれませんが、各種インフラの整備も進み、直近でも機械学習の活用が話題になっています。業務の効率化は勿論のこと、更にその先のチャレンジをしていくにあたっての追い風ともとれる取組は非常に多く出てきています。
プランニング、実行内容、施策結果の評価、次の施策への反映…と、普段の業務は細かな判断と意思決定が必要ですが、ゆくゆくはとても大きな経験になると考えています。
マーケティング領域で考えると、こうした経験をしてきた人材が将来的には判断材料の根幹を鑑み、提言できるような役割に変わっていくのではないかと個人的に考えています。マーケティング視点を持ち、数字を基に判断する習慣はより重要視されていくことは間違いありません。例えば、

– マーケティング課題の特定の事象の発生確率を算出する役割
– 事業予測の算出、策定目標値の試算・抽出

といった役割が考えられます。

広告主側でも、代理店側でも、コンサルタント職も、この先数字を基に判断し試算し新たな取り組みへ活かすという一連の流れはますます必要とされます。その際、数字の羅列として捉えるのではなくマーケティング観点で捉えることが、より一層施策価値を昇華できるポイントです。各種データ整備が様々な形で進み、各社が立場の違いを乗り越えた上で、マーケティングにおける本質的なパートナーシップが進む将来はそう遠くないと考えます。
弊社としましても、この先のマーケティングを牽引していく高い市場価値の人材を輩出していけるよう、マーケティング全体を俯瞰した上での判断や意思決定の機会を増やして経験を重ねていきます。


メニューボタン

サイトマップ

プライバシーポリシー

JPEN