Column

2016.06.17

広告配信を取り巻くAIと機械学習及び今後の展望




トレーディングデスク局
Marketing Design Division マネージャー
関内 悟史

昨今、マーケティング領域でも人工知能に関するニュースが増えています。
機械や人工知能、AIといった技術の発展により、少し前からIOT(Internet Of Things)という言葉も国内で多く聞かれるようになりました。FinTechやEdTech等、業界によっては事業者側ではなくIT側からの働きかけで取り組み方やサービスが変わり始めてもいます。オンライン広告を取り巻く環境でも、情報量の増加(Big Data化)やモバイル端末への可処分時間シフト等、テクノロジーの変遷を踏まえ様々なトピックが出てきています。

今回、トレーディングデスクの観点から広告配信プラットフォームにて取り組まれている機械学習機能の事例をご紹介しつつ、今後の展望や求められるスキルについて言及します。

■はじめに
広く考えると、機械学習の仕方は大きく2通りです。

(1)インプット/アウトプットのルールを学習させる
(2)インプットのみを行い、学習は機械に任せる

情報を返す正確さを求める場合は(1)が使われることが多いと思いますが、運用者が見る広告運用の管理画面で行う学習設定は(2)が前面に出ています。(学習の過程で、全配信結果から(1)での学習も勿論行われていると思います)

機械がデータを区分する方法としては、最近傍法、ナイーブベイズ法、決定木、サポートベクターマシン、ニューラルネットワーク等が主流だと思います。昨今また人工知能の研究が活発になっていますが、特にニューラルネットワークを多層化し、発展してきたディープラーニングが牽引しているようです(※)。この領域では、人が細かにルールを決めて保守・管理・監督するものではありません。そのため、「人工知能の暴走」もリスクに上がっており、「人工知能の暴走停止の仕組開発」がニュースになることもあります。

広告配信領域でも、管理画面での設定を通じて機械学習が適用・反映されています。
一方で、配信量によっては最適化が掛からないことも多々あると思います。当然ですが、分散状況の判断ができず、最適化のための主成分分析が機械側でできないことに起因します。

■学習促進における弊社での事例
ダイレクトレスポンス型の案件にて、ディスプレイ広告の運用経過を見て判断し、CV(CVR)軸での最適化を追加適用しました。

<前提>
プラットフォーム側での最適化稼働条件
・キャンペーン単位で30日間15件以上のCVが発生していること

最適化稼働前のキャンペーン設計状況
・広告主様のWebサイトページをクラスタリング(商品詳細ページ群、フォームページ等)して、離脱者を広告グループ毎に設定 ※リターゲティング配信
・上記グループは同一キャンペーン内に設定
・30日間のCVは200件弱で推移(最適化基準には到達している)
・最適化適用前のCPAは約1,500円

<適用内容と結果>
キャンペーン設計
・ターゲット(商品詳細ページ群離脱、フォームページ離脱)を広告グループで分け、同一キャンペーン内で適用

結果
・適用後、CPAが2,300円ほど上昇

<対策内容と結果>
対策内容
・配信ターゲットの設定を広告グループではなくキャンペーンで分割

結果
・全体の効率が大きく改善
-商品詳細ページ群離脱CPA:1,200円
-フォームページ離脱CPA:500円

<総括>
恥ずかしくもあり当たり前ですが、最適化の掛かる粒度に合わせた設計が大事です。
上記事例では、キャンペーン単位での最適化実行にあたり、改善の主成分が商品詳細ページ離脱者とフォームページ離脱者で異なっていたことが容易に想像できます。また、今回行った設定変更は「特徴量設計」に該当します。完全な人力での最適化はデータ区分と分析だけで時間が取られてしまうため機械に依存していくと思いますが、広告の学習促進領域に際しては人が関与し続けると考えています。

■広告配信における人工知能の活用例と今後の展望
あくまでも個人的な意見ですが、部分最適領域の積み重ねが現在の国内におけるアドテクノロジー領域を形成していると考えています。フィードマネジメント/レコメンド機能、クリエイティブの多変量解析/ABテスト、アドフラウド対策、広告取引形態、3rd Partyでのデータ活用等々非常に多くのプレイヤーが関与します。個人の実感として、「広告効果」を追求するあまり、本来は不要な広告配信も増えてきている印象を持っています。例として、以下のような場合です。

CPA軸での運用を強化しすぎてしまい、本来不要なリーチをSEMで行ってしまった場合

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Web上の情報のみで判断し、リーチをしなくてもCVに至るターゲットへのリターゲティング配信

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上記「図①」のケースはCookie除外設定を行うことで効率化ができますが、特に気にしているのは「図②」のケースです。赤で記載した意向を持っている場合、リターゲティング配信に接触・クリックしなくてもCVへ到達するのではないでしょうか。

人がどのように情報を捉えるか、どのように運用すれば広告価値が最大化できるかを考える機会が一層増えてきました。その中で、注目している領域が「感情軸」での運用です。Webサイト来訪時の行動(閲覧ページ、マウスカーソルの動き等)を人工知能により分析し、好感/反感を持ったのか、CV到達見込みはどの程度かを計算できるようになり、リターゲティングのマークリスト化を行うことも可能です。

例として、下図の3通りの新規来訪者がいたとします。
column_20160617_3

この場合、【1】の意向上昇度合いと推移を鑑みるとリターゲティング配信の対象者から除外します。また、【3】のパターンも意向上昇が見えにくいため優先度が下がります。

主なターゲットは【2】です。意向が上がる際はどの情報を調べているのか、何を伝えるべきか、情報をどう捉えているか、どうコミュニケーションを重ねるかを考えながらリターゲティング配信を運用していくことで、意向の上昇と顧客化を図ることができます。

この配信形式であれば、ページ単位での細かなマーク設定は必要ありません。ターゲットとなる見込み度合いの幅を決め、流入経路毎で顧客化までの期間(リーセンシー)を見極めて配信に適用することが可能です。画像、コンテンツといった各種データと行動パターンを掛け合わせ、従来は手動で設定していた特徴量が自動で計算されるために学習が進んでいきます。
また、人工知能による音声/画像認識から、目の前の人によって出稿内容が変わるサイネージも実装が進んでいます。今後、技術革新によりターゲティング精度は一層向上し、手法も多様化していくことが考えられます。現在ではまだ想像もつかないような広告配信やマーケティングスキームも出てくるかもしれません。

■運用人材に求められるスキル
技術に注目することも当然必要ですが、主に必要なスキルは状況判断力と仮説力だと考えます。
意図したターゲットにリーチができているか、他施策との重複はないか、数字変化は意図した範囲内か、設計は適切か…。様々な切り口から状況を把握し、調整や対策の実施判断を行う必要があります。

運用者で何よりも差が出るのが仮説力です。機械学習を最大限発揮し、とことんCPAを抑制することも大事です。しかし、本当にビジネスインパクトに貢献できる(その施策でなければ純増し得ない)CVなのかを念頭に置き、成果貢献の可能性がある要素を考えて施策化する力が必要です。
非常に難しい上に全ての企業様では該当しないとも思いますが、上記のような運用の取り組みが進んでいくと、最終的にはデジタルにおいてもブランディング施策がさらに多様化してくると思います。

■まとめ
以前弊社のコラムでもご紹介させていただいたように、広告配信/効率化軸から視点を広げ、広告配信先であるパブリッシャー/メディア領域へと取り組みを拡大していく中で、昨年から配信の仕組みや広告成果を本当の意味で実感することができてきました。

広告掲載先であるパブリッシャー/メディア様の目標も、広告配信を行う事業者様側の目標も、達成するには設計・設定・運用が鍵となり、機械学習の利用が欠かせません。リスティング広告もそうですが、アドネットワーク/DSPにおいても様々な最適化機能が搭載されています。CTR、CVR、Viewabilityといった率の観点もあれば、CPC、CPA、vCPMといったコスト効率軸の観点もあります。

当コラムでは、業界を取り巻く本質を個人的に解釈して展望を言及させていただきました。
ビジネスをスケールできるような運用を考えて実行し続け、取り巻く業界を盛り上げていきたいと考えております。

※参考:「人工知能は人間を超えるか」(角川EPUB選書、2015年3月)


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